私は幕張イオンの島村楽器で、Cubaseをはじめとする音楽機材を購入した。

昔のカセット録音とは、まるで世界が違う。
パソコン、Cubase、ギター、ピアノ、ドラム……。
楽器が弾けなくても、覚えなければならないことは山ほどある。
独学で約2か月。
やっとの思いで、YouTubeに自分の音楽をアップした。
間違いだらけだったが、「神様の言うとおり」を耳コピしながら、なんとか一曲にまとめた。
でも、自分で採点すれば30点くらいだった。
そんなある日、久しぶりに幕張の島村楽器へ電話をした。
電話に出たのは、たまたま「チェロ弾きのゴーシュ」だった。
「もしもし、私です。覚えていますか?」
「もちろんです」
その声を聞いて、私は懐かしい気持ちになった。
そして、今のDAWで困っていることを話した。
するとゴーシュは、
「ぜひ来てください。わからないことはお教えしますよ」
と言ってくれた。
私は嬉しくなって、何がどうなるのかもよくわからないまま、
「はい」
と答えた。
後日、私は島村楽器へ向かった。
お金では買えないもの
なぜ、私とゴーシュの縁がここまでつながったのか。
それには、理由がある。
ゴーシュは、最初からとても親切に接客してくれた。
そして、私の人生に新しい夢を与えてくれた。
CubaseやiD4など、私に必要な機材を的確に紹介してくれたのだ。
もちろん、100万円、200万円というような買い物ではない。
高い、安いという話でもない。
世の中には、お金では買えないものがたくさんある。
私にとって、ゴーシュとの出会いは、そのひとつだった。
だから、それ以来、私はピックひとつでもゴーシュから買うことにしている。
人との縁は、ネットでは買えない。
「私が実際に使っている機材・サービス」
「わからないことは、お教えします」
この先、私はいくつまで音楽制作を続けられるかわからない。
それでも、ゴーシュは私に、音楽制作をしている人を紹介してくれた。
親切な30歳くらいの男性Wさんだった。
(私の中では、島村楽器のアトレイユと呼んでいる。)
もちろん、その人も島村楽器の社員さんだった。
私は個室へ案内され、約2時間、DAWについて教えてもらった。
歌の音の作り方。
プラグイン。
オートメーション。
今まで知らなかったことばかりだった。
もちろん、2時間ですべて理解できたわけではない。
でも、
「Cubaseって、こんなことまでできるんだ」
そう思った。
少しだけ、未来が見えた気がした。
特に印象に残ったのは、説明の「速さ」だった。
操作がとにかく速い。
きっと、たくさん勉強しているのだろう。
私は感心してしまった。
私は、そこまでプロ級の音楽制作ができるようにはならないかもしれない。
でも、それでいい。
私は私の音楽を作ればいい。
私の曲を、私なりに続けていけばいい。
アトレイユと、セバスチャン
『ネバーエンディング・ストーリー』は、少年アトレーユが、虚無にのみ込まれようとしているファンタージエンを救うため、果てしない冒険へ旅立つ物語だ。
その物語を読んでいるのが、少年バスチアン。
物語の中で冒険するアトレーユと、その物語を読むバスチアン。
二人の世界は別々のようでいて、物語が進むにつれて、少しずつ重なっていく。
私が若いころに映画で見たアトレーユは、長い年月を経て、今「アトレイユの冒険」という自分の音楽の中に戻ってきた。
そして今、私はバスチアンのように、その冒険の世界に触れている。
ただ物語を読むのではない。
音を一つずつ重ねながら、自分自身の「アトレイユの冒険」を作っている。
そのことを考えていると、私自身の人生にも、ひとつの物語が重なって見えてくる。
虚無の世界から、夢の世界へ
一年前まで、私は虚無の世界にいた。
当時の68歳はすべてを見失っていた。
でも、今は違う。
私の前には、夢と希望の世界がある。
Cubaseで音を重ね、音楽を作る。
遅すぎる挑戦かもしれない。
いつまで続けられるかもわからない。
それでも、私は続けたい。
また明日目が覚めたら、この世界へ戻ってこよう。
黒子歌人

