
人生の戦いがはじまる
何をやっても上手くいかない。
なぜか人に誤解される。
一生懸命やったのに、最後は傷つくだけ。
そんな時、私は思うのです。
きっと、火妖怪がまた暴れているんだと。
でも――
私の中には、もう一つの炎がある。
消えそうになった心に、そっと火を灯してくれる存在。
それが、火妖人。
この物語は、私の人生の中で本当に起きた、
「心の炎」と「闇の炎」の戦いの記録である。
三歳の孤独
私は三歳の時、初めて“孤独”を知った。
置いてきぼり。
たったそれだけのことかもしれない。
でも幼い子供には、世界から捨てられたように感じるものだ。
男兄弟三人の末っ子。
着るものも、履くものも全部お下がり。
「おまえはまだ小さいからダメだ」
その言葉を、何度飲み込んだだろう。
みんなの後ろ姿を見ながら、悔しくて、悲しくて、
ただ黙って下を向いていた。
その時だった。
心の奥の暗闇から、あいつが現れた。
火妖怪、現れる
黒い炎を揺らしながら、火妖怪は笑った。
「おい火妖人。
何でおまえは、あいつを甘やかすんだ」「だから、いつまで経っても弱いままなんだよ」
「見てみろ。
たかがスイカ割りで置いてきぼりになったくらいで、泣きじゃくってる」「こんな弱虫が、まともな人間になれるわけないだろ」
「いつも自信なさそうに生きてる。
人間社会には不要なやつだ」
その言葉は、刃物みたいに胸に刺さった。
すると、暗闇の中に小さな炎が灯る。
静かだった。
でも、その炎は消えなかった。
火妖人の炎

「違う……」
「私が守らなかったら、この子は壊れてしまう」
「誰かが心の火を守らなきゃいけないの」
火妖怪は鼻で笑った。
だが火妖人は、まっすぐ前を見ていた。
「確かに、たかしは弱かったかもしれない」
「野球で挫折して、死ぬほど苦しんだ」
「でも、この子は立ち上がったのよ」
「新しい道を見つけて、自分の足で歩き始めた」
「あなたは知らないでしょう?」
「あんなに綺麗な声で歌える子はいないの」
「レコードだって出したんだから」
その瞬間――
火妖怪の顔が歪んだ。
「チッ……」
黒い炎を残しながら、火妖怪は消えていった。
幸せだった日々
やがて、たかしは大人になった。
家庭を持ち、家族を守るために必死で働いた。
私は安心していた。
もう、火妖怪は現れない。
そう思っていた。
だが、人生はそんなに甘くなかった。
四十歳、崩れ始めた体
たかしは四十歳で会社を立ち上げた。
夢だった。
だが同時に、強烈な不安と責任が襲いかかってきた。
そして、体が壊れた。
潰瘍性大腸炎――
水を飲めば、数分後にはトイレへ駆け込む。
腹は激しく痛み、血まで出る。
それでも、会社を守るため働き続けた。
夜中、苦しみながら座り込むたかしを見て、
私は胸が締めつけられた。
その時だった。
背後から、あの笑い声が聞こえた。
再び現れた火妖怪
「ハッハッハッ……」
「久しぶりだなァ」
「また来たの!?
今は苦しい時なのよ!」
「俺が何もしなくても、こいつは自分で人生を壊すさ」
「体は治るだろう。
だがな……もっと恐ろしいものが壊れる」
「何を言ってるの!」
「見てればわかる」
火妖怪は、不気味に笑いながら消えた。
壊れていく心
数年後――
会社は大きくなっていた。
私は嬉しかった。
「ほらね。たかしは強くなったじゃない」
そう思った。
だが三年後。
火妖怪は再び現れた。
今度は、ゆっくりと笑いながら。
「どうだ。元気か?」
「元気よ。何しに来たの」
「よく見てみろよ」
その瞬間だった。
銀行で頭を下げるたかし。
震える手。
眠れない夜。
壊れていく神経。
私は息をのんだ。
「うそ……何で……」
「もう病気だよ」
「借金、不安、ストレス。
自律神経はボロボロだ」「おまえが甘やかしたからだ」
「もう立ち直れないんじゃないか?」
火妖怪の声が、心をえぐった。
でも――
小さな炎は、まだ消えていなかった。
消えなかった炎
「それでも……大丈夫」
「たかしは、あなたに何度も負けなかった」
「だから、今回も負けない」
小さな炎が、静かに燃え上がる。
その炎は、弱く見えても消えなかった。
そして、たかしは苦難を乗り越え、
WordPressの世界で新たな人生を見つける。
何度倒れても。
何度火妖怪に笑われても。
心の火だけは、消さなかったのである。
人は人生の中で、何度も火妖怪に出会う。
だが、そのたびに心のどこかで、小さな火妖人が炎を守っているのかもしれない。
人は、強いから生きられるのではない。
心の火を消さなかった者だけが、また歩き出せるのかもしれない。
著者:黒子ダイル


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